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第二TOKYO-revive-(第一章)P4君の名は・・・ [小説Ⅱ]

第二TOKYO-revive-
 第一章 君の名は・・・

「困りますよ、天野さん。こんなことされちゃあ。」

斗織は顔の前で手を合わせながら、軽く頭を下げる。

それになだめられたように、研究員の一人らしき女の顔がゆるむ。

まだ少女のようなあどけなさを残した新米研究員に、今日ばかりは頭が上がらなかった。

「今回だけですからね。」

研究員は、そう言ってカードキーを斗織の手に握らせると、肩をすくめて見せた。

研究員が立ち去るのを確認してから、斗織は物陰に隠れていた秋生を呼び寄せる。

巴を背負った秋生の背中には、うっすらと汗が滲んでいた。斗織には、

それが暑さによるものからなのか、それとも緊張といった部類からくるものなのか分からなかった。

あの場にいた誰もが、いや、正確には秋生と斗織は、銃声の直後、

巴の胸から流れ落ちる紅い鮮血を予感した。しかし、

実際には巴の服を裂いただけで、予感した風景が斗織の目の前に広がることはなかった。

巴の胸に命中した銃丸は、機能を停止させる能力はあっても、身体を打ち砕く威力はなかったようだ。

巴は、一瞬驚愕の表情をみせ、すぐに機能を停止した。あれから約一時間後、

斗織がサンプル保管の名目で自分の研究室の研究員を呼び出し、

巴を密かに研究所まで運んだのだ。正確に言うと自分の研究所ではなく、

アトライズ株式会社の研究所だが。秋生は、けして頭の悪いほうではない。

どちらかといえば、かなり専門的なことまで理解できるほど賢かった。

しかし、斗織の尋常でないほどの専門的知識には、とても及ばなかった。

斗織は、巴の胸元にある十字架の刺青だけで、巴がオートマタだと判断した。

銃弾の摩擦によって焼け爛れた人工の皮膚がはがれて、

中からいかにも硬そうな金属がのぞいていたからだ。

昔はどうだか分からないが、今現在日本国で製造されているオートマタには、

十字架の刺青を入れるという異様な習慣が染み付いていた。

見たところ、どこのメーカーの刺青とも一致しなかったため、

オリジナルで作られたものだろうと推測される。

あの要という男が、巴を作ったのだろう。

いくら自分で作った全自動コンピューターだからといっても、

こんな使い方をすることについて、斗織は少なからず尊敬の念だけは抱けないだろうと思った。

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コメント 4

an

おぉ・・・

なんか緊張感有りになってきた♪

次回楽しみにしてるぜぃ!
by an (2009-08-04 20:06) 

sai

あ、緊張有りを読み取ってくれた?
よかった~、ちょっと自信なかったから・・・

by sai (2009-08-07 13:00) 

an

大丈夫さッ!

saiの小説は読み取りがちゃんとできるからさ☆
by an (2009-08-07 18:33) 

sai

ありがとー。
by sai (2009-08-07 21:17) 

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